現在主に使われている文様9

水草文〈ミズクサモン〉
水辺に生える植物を総称して水草といいますが、水草のある水辺の風景は、日本的文様として古くから好まれてきました。沢瀉〈オモダカ〉・燕子花〈カキツバタ〉・葦などを水辺に配し、水鳥や波などと合わして描かれたものがあります。

水車文〈ミズグルマモン〉
水車は揚水用として、平安時代後期から鎌倉時代にかけて荘園の発達と共に各地で用いられるようになりました。この水車を文様化したもので江戸時代の小袖に盛んに用いられました。城郭や城壁に松・柳・舟などと組み合わせたり、風景模様として使われることが多く、単独では能装束に見られます。

水鳥文〈ミズドリモン〉
水辺に遊ぶ千鳥・鴨・さぎ・都鳥・せきれい・鴫〈シギ〉などを描いた文様で、葦や薄〈ススキ〉、沢瀉〈オモダカ〉などの水草と組み合わせることが多く、風情あふれる風景文様として多数用いられています。

水文〈ミズモン〉
銅鐸〈ドウタク〉にも流水門が見られるように、水は人間にとって聖なるものとみなされてきました。海・川・池や流水・波・渦など様々な形で古くから文様化されています。また、車に水、筏〈イカダ〉に水、菊に水、千鳥に波など、他の文様と合わせて使う場合も多く、現在にも受け継がれています。白生地の地紋にも使われています。

御簾文〈ミスモン〉
御簾とは簾〈スダレ〉のことで、平安時代の家屋(寝殿造)の庇(ヒサシ)の間にかけられた美しい装飾的な簾です。これを文様としたのは江戸時代で、キモノに多く用いられました。紅地に御簾や几帳、檜扇などをあしらった豪華な打掛もあり、王朝風な文様として現在に受け継がれています。

名物裂(メイブツギレ)
中国や南方諸国から輸入された染織品で、茶の湯の発達に伴い珍重されたものです。有名な茶器の袋などに用いられ、織・色・柄など優れたものが残され、日本の染織界に大きな影響を与えました。日野間道〈ヒノカンドウ〉・花兎金襴〈ハナウサギキンラン〉・荒磯緞子〈アライソドンス〉・蜀江錦〈ショッコウニシキ〉・棧留縞〈サントメジマ〉などがあり、帯の柄としても好まれています。

文字文〈モジモン〉
文字を文様化したもので、書体は自由に変形させ、角字文字や円寿文字のように図案化したものもあります。文字によって吉祥・信仰・縁起・勝利などの意味があり、寿・福・喜はめでたい柄、梵字〈ボンジ〉や経文〈キョウモン〉は仏事などの喪服用の帯の柄として使われます。

屋形船文〈ヤカタブネモン〉
屋形をつけた船は貴人が遊山に出かける時に用いられることが多く、江戸時代には川遊びなどにも使われるようになりました。きれいに飾った御座船を文様化し、川遊びの風景の中に描いたものが多く見られます。

八つ橋文〈ヤツハシモン〉
小川や池などに幅の狭い板を継ないで架けた橋のことをいいますが、愛知県の逢妻川南部では、川の流れが乱れているので8つの橋を架けたことからこの地名となりました。この橋は、「伊勢物語」で有名になり、光琳作の「八橋蒔絵硯箱」などに見られます。各種工芸品や染織品に用いられています。

柳文〈ヤナギモン〉
紅の花に対し、緑の柳として、細いなよやかな風姿が好まれ「万葉集」などの詩歌や絵画の題材としてよく用いられました。早春の芽柳、枝垂〈シダレ〉柳が特に好まれ、様々な形に文様化されています。風景紋の中にも描かれ、蹴まりと合わせたものも多く見られます。

山路文〈ヤマミチモン〉
山の斜面を登るようにジグザグの線で表わされた文様で、山形が3つ以上連なったものをいいます。能装束や小袖の地紋にも使われ、横段の柄に対し縦柄になり、裾模様などに用いられています。単独以外に他の文様をあしらって用いられることもあります。

有職文〈ユウソクモン〉
平安時代以来、公家〈クゲ〉の邸宅の調度・服装・輿車〈コシグルマ〉などの装飾に用いられた独自の様式をもつ文様の総称です。古典文様として現在まで受け継がれているものが多く、基本的なものに小葵〈コアオイ〉文・唐草文・菱文・襷〈タスキ〉文・亀甲文・七宝文・立桶文などがあります。

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